胃・十二指腸潰瘍
消化性潰瘍の病理
消化性潰瘍の主な症状は心窩部(みぞおち)の痛みや上腹部腹痛です。胃潰瘍は胃角近くで、十二指腸潰瘍は十二指腸球部にて
好発し、再発率が極めて高い病変です。
※迷走神経末端から出るAChは、ガストリン、ヒスタミンの分泌に必要です。よって、AChを遮断すれば
すべてのM3、G、H2レセプターすべてを遮断できます。
| 胃潰瘍 |
防御因子が低下するために起きる。胃酸分泌能は正常で、食後すぐに痛むのが特徴 |
| 十二指腸潰瘍 |
攻撃因子が増加するために起きる。胃酸分泌能は高くなり、空腹時、特に夜間に痛むのが特徴
|
消化性潰瘍にもっともかかわりの深いのは自律神経の興奮でしょう。
交感神経がストレス等により亢進すると、胃粘膜の血管が収縮し、血流が鈍くなるので、胃の防御機能が
低下します。一方、副交感神経が亢進すると胃酸の分泌量が増加します。よって副交感神経が優位になる夜間は
胃酸分泌が多いです。
| 胃酸 |
強酸性の液体で食物を殺菌する。 |
| ペプシン |
蛋白質を小腸で消化されやすいペプチドに分解する。 |
| 粘液 |
粘膜を食物による刺激や胃酸、ペプシンから保護する。 |
<ヘリコバクターピロリについて>
ヘリコバクターピロリという名称は、らせん状(helical)している細菌(bacteria)、胃の幽門部(pylorus)に由来し、
このピロリ菌は、胃潰瘍患者の70〜80%、十二指腸潰瘍患者の90〜100%で見られます。
ヘリコバクターピロリの特徴は、大きく分けて以下の3点です。
| ・ |
ウレアーゼ(尿素分解酵素)を分泌し、胃酸を中和。胃の中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に中和 |
| ・ |
鞭毛で自由に移動、胃の粘膜表面にある粘液中に存在している。胃酸の少ない粘液中へ移動する。 |
| ・ |
体の形を変える、環境が悪化すると、らせん状から球状に形を変えて身を守る。 |
経口的に進入したピロリは、強いウレアーゼ活性により強酸性の胃内で身を守り、
尻尾のように長い鞭毛で胃酸の少ない粘液の中にもぐりこみます。
胃粘膜に定着して感染が成立すると、CagA(空胞化毒素)、VacAなどのサイトトキシン、アンモニアなどにより、胃粘膜が傷害されます。
また定着により、IL-1、IL-6、IL-8、TNF-αなどの炎症サイトカインが放出され、炎症反応が起こります。
消化性潰瘍の治療法
潰瘍は粘膜下層まで穴が開いてしまった状態ですので、
心窩部の痛みに加えて胃潰瘍の場合は吐血、十二指腸の場合は下血(タール便)を
伴います。これらの症状があった場合は、ただの胃痛だとは思わずに検査を受けるべきです。
◆X線造影検査
バリウム(造影剤)と発泡剤を服用し、食道から、胃・十二指腸までを膨らませた状態でX線撮影をする検査
。潰瘍(組織の欠損)部分にバリウムがたまって白く移ることを利用して診断します。
◆内視鏡検査
先端にレンズがついたファイバースコープなどを口からいれ、モニターを通じて食道や胃・十二指腸
までを直接観察する検査です。内視鏡検査は胃がんなどの悪性病変との鑑別を行う目的としてなされます。
これらの検査にて消化性潰瘍と診断された場合は、薬物療法の適応となります。攻撃因子抑制薬と
防御因子増強薬の併用が普通です。
ただ、ピロリ菌感染が発覚した場合は、PPI、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤を同時に
1日2回で1週間服用する3剤併用療法の適用となります。
| PPI |
アモキシシリン |
クラリスロマイシン |
タケプロン オメプラゾン |
アモリン サワシリン パセトシン |
クラリシッド クラリス |
| ランサップ(タケプロン+アモリン+クラリス) |
消化性潰瘍の治療薬
| PPI(プロトンポンプインヒビター) |
胃潰瘍では8週まで、十二指腸潰瘍では6週まで。再発・再燃を繰り返す
逆流性食道炎の維持療法で連続投与可。最終段階を阻害するのでH2ブロッカーより作用は強い。
|
オメプラゾン オメプラール (オメプラゾール) |
1日1回 |
タケプロン (ランソプラゾール) |
1日1回 |
パリエット (ラベプラゾールNa) |
1日1回 |
| 共通の副作用:頭痛、めまい、AST/ALT上昇、便秘など |
| H2ブロッカー |
| 壁細胞のH2受容体を遮断し、胃酸の分泌抑制作用を示す。適応外で蕁麻疹にも用いる(T細胞受容体参照)。 |
アシノン (ニザチジン) |
1日2回。消化管運動促進作用、唾液分泌促進作用もあり。 |
アルタット (ロキサチジンアセタート) |
1日2回。徐放製剤、粘膜保護作用もあり。 |
ガスター (ファモチジン) |
1日2回、D錠は口腔内崩壊錠で水なしで服用 |
ザンタック (ラニチジン) |
1日2回 |
プロテカジン (ラフチジン) |
1日2回。カプサイシン感受性知覚神経を介した胃粘膜防御因子増強作用もあり。 |
タガメット (シメチジン) |
1日4回or1日2回 |
| 選択的ムスカリン遮断薬 |
| ムスカリン受容体のうちM1受容体に特異的に作用する、心臓、消化管平滑筋への副作用が少ない。
|
ガストロゼピン (ピレンゼピン) |
1日3〜4回。M1受容体に選択的なので、前立腺肥大、緑内障にも使用できる。 |
| 抗コリン薬 |
| 酸分泌抑制作用は弱く、胃酸の排泄を遅延させることを目的とした、鎮痙・鎮痛薬としての使用。
|
セスデン (チメピジウム) |
1日3回 |
ブスコパン (ブチルスコポラミン) |
1日3〜5回 |
| 抗ガストリン薬 |
| ガストリン受容体拮抗作用+G細胞のガストリン放出を抑制する。
|
ストロカイン (オキセサゼイン) |
抗ガストリン作用、表面麻酔薬として局所麻酔作用 |
| 薬品名 |
粘膜被覆 |
粘膜修復 |
粘液分泌↑ |
血流↑ |
PG類↑ |
活性酸素↓ |
| アルサルミン | ○ | ○ | | ○ | | |
| イサロン | | ○ | ○ | ○ | ○ | |
| ガストローム | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
| プロマック | ○ | ○ | ○ | ○ | | |
| マーズレン | | ○ | | ○ | | |
| セルベックス | | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ムコスタ | | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ウルグート | | | ○ | ○ | ○ | |
| ドグマチール | | | | ○ | | |
| ノイエル | | | ○ | ○ | ○ | |
| サイトテック | | | ○ | ○ | | |
| 粘膜抵抗強化薬 |
アルサルミン (スクラルファート) |
1日3回。ショ糖硫酸エステルアルミニウム塩。→抗生剤、ビスホスホネートに注意 |
イサロン (アルジオキサ) |
1日3回 |
ガストローム (エカベトNa) |
1日2回朝、就寝前 |
プロマック (ポラプレジンク) |
1日2回朝、就寝前、亜鉛を含む |
マーズレンS (アズレン+L-グルタミン) |
1日3〜4回 |
| 粘液産生・分泌促進薬 |
セルベックス (テプレノン) |
1日3回 |
ムコスタ (レバミピド) |
1日3回 |
| 胃粘膜微小循環改善薬 |
ウルグート (ベネキサートβデクス) |
1日2回朝、就寝前。妊婦に禁忌 |
ガスロンN (イルソグラジン) |
1日1〜2回。細胞間結合強化作用あり |
ドグマチール (スルピリド) |
1日3回。胃運動亢進作用、抗うつ作用 |
ノイエル (セトラキサート) |
1日3〜4回。 |
| PG製剤 |
サイトテック (ミソプロストール) |
PGE1誘導体、NSAIDsによる胃障害にのみ適応、妊婦に禁忌。Mg製剤と併用で下痢↑ |